報知新聞釣り欄「魚心」から:昭和55年11月16日
釣り人のための釣具を
ギネスブックではないが、最近の日本には「世界一」なるものが増えつつあるそうだ。オートバイの数が世界一、ミシンの数も世界一だという。だが、皮肉なことにミシンなどは「それを使っていない数」も世界一だという。金にまかせて、ロスも多いということだ。
この傾向は、釣り業界においてもあてはまる。たとえばリール。各メーカーは毎年スピニングリールの新製品(たいていの場合は目先を変える程度で、目新しいメカを備えたものはほとんどない)を発表しているが、申し合わせたように小から大まで一連のものを揃える。600、700、800、900、1000。1000から上は、2000、3000〜6000といった具合だ。これで全部がまんばんに売れるかといえばそうではなく、必ず売れる品と売れ残る品がある。それはそうだろう。これを全部揃える人はおそらくいないはずだ。早い話が、チヌ釣りには700、グレ釣りには900、ヒラマサ釣りには5000、投げ釣りには6000くらいあればおおよそ用が足りるのだ。にもかかわらず、全商品が消費者の手に回るのは売れ残った品種をダンピングなどで売りさばくからだ。
ここにロスがある。メーカーには「品種を多く作っておけば、どれかがヒットするだろう」という安易な計算があるのだろうが、どうしてもっと自信をもって商品を作らないのか。総花式に製造して、これを羅列するのではなくて、「チヌ専用」とか、「グレ専用」とか銘打って発売しないのか。
釣り人が心から望んでいるりーるとは、品種の多いことでも、装飾だけ新しくなることでもない。サオがグラスからカーボンになって、驚くほど軽く、丈夫になっているのに、なぜリールだけが、百年一日のごとく重いのか。徹底的に軽さを追求し、さらにそれを専門化したら、それこそヒット商品間違いなしだろうに。そしてヒット商品はコストダウンにも繋がるだろう。
リールに限らず、釣具業界は品種においては一応出そろったようだ。あとは、改良だけだが、その最良の方法は、釣り人との接触により、どんな釣具が釣り人にアピールするかをよく考えることだ。
あるメーカーなどは、名機と呼ぶにふさわしいリールを製造していながら、「採算がとれないから」との理由でこれを製造中止にしてしまった。釣り人不在もはなはだしい一例だが、長い目で見て、「どちらが得か」よく考えて見てほしいものだ。 (報知APG・高橋 康生)