報知新聞釣り欄「魚心」から:昭和56年3月22日
釣りに「絶対」は禁句
Aさんにメバル釣りの神髄を教えてもらった翌週、私は妻をウチの海へ連れて行った。このときも、私は短時間で30尾近いメバルを釣って妻に大差をつけ、いよいよこの釣りに自信を深めた。誰かに「なんか堅い釣りありまへんか?」と聞かれる度に「メバルやったら確実でっせ」と答えるようになった。
徳島県下ではあまりメバルを釣らないだけに、メバルに関する私の吹聴は、かなり周囲に刺激を与えたようだ。そのうちBさんが、「ぜひ一度、、」ということなった。幸いその日は、早朝から快晴だった。早々に2,30尾も釣っておいたら大体要領が判って貰えるだろう、、、とたかをくくっていた。
ところが、どうもことがスムーズに捗らない。第一に潮がストップしたままだ。全く動かない。マキエを続けたがアタリがない。サシエには、最高だといわれるシラウオを使っているのに、そのまま残っている。
「今日は小潮やから、午前9じごろまでは釣れんかも知れん」と行っていた細川船長の言葉を思い出した。ところが、9時が過ぎても10時が来ても、潮も動かず、アタリもない。Bさんは心の動揺を極力私に見せまいとしている。それが私には却って心苦しい。「絶対釣れまっせ」と保証しているのにこのざまでは、Bさんは必ず心の中では失望しているに違いない。11時が過ぎて、11時15分。やっと私のウキが沈んだ。メバルだ。続いてBさんのうきにもアタリがあった。これには2尾が連でかかっていた。
「やれやれ、やっとジアイが来たワイ」と思ったのも束の間、この後も全くアタリなし。仕方なく予定より早く、午後1時には切り上げることにした。私の鼻は見事にヘシ折られた。釣りには、たとえメバルのように確率の高い魚であっても、「絶対釣れる」などと盲信したり、極言したりすべきではない。
−この年にして、そんなことが身に沁みて感じられた一日だった。 (報知APG・高橋 康生)
筆者からひとこと: 最近、メバルは釣りやすいどころか、釣りにくい魚に格上げされています。その代わりとして、サヨリが登場しています。一日100尾はおろか、200尾でも釣れてしまうサヨリでさえ、日によっては突然、一尾も釣れないことだってあります。ハイ。