報知新聞釣り欄「魚心」から:昭和56年2月1 

釣り場地図お忘れなく

 とにかく釣り人は早合点しやすいものだ。釣れた、というニュースを聞くと、早くも「自分ならもっと釣れる」というような錯覚に陥り、そそくさと準備にかかる。自分の知っている釣り場ならともかく、知りもしない釣り場でも充分聞こうとしない。
 「ああ、わかった、わかった」などと、こちらの説明を鵜(う)呑みにして出かける。
 「○○橋の下流右岸にある××食堂の下やで」などと具体的な目標をいっておいても、果たしてわかっているのかどうか。
 
 つい先日もNさんにハエ釣りのポイントを教えた。地図を書こうか、といったら、よくわかったから大丈夫だ、という。
 帰ってきて、報告してくれたが、「あんたに教えてもらった所が充分わからんかったけど、大体ここらあたりやと思うて釣りましてん」ということだった。やはり私の言ったポイントから、百bほどずれているのだ。しかし、面白いことに、Nさんは”ここだ”と信じ、じっくり釣ったばかりによく釣れた。しかも、5人もの大勢がズラリと並んでワイワイ言いながら釣っているのだ。

 今度は反対に、私が聞く側に回った。
 「それ、どのへんか、もっと詳しく教えてぇな」
 もちろん、私ならもっとたくさん釣れるだろうに、、、という不遜な気持を胸に秘めてである。

 人のことを言えた柄ではない。「早合点」は私自身も得意中の得意である。
 今年の初め、伊予川へハエ釣りに出かけた。たかがハエとばかり、地図も持たず、充分聞きもせずに出かけたまではよかったが、目的地はなんと水が干上がっていた。周辺に水溜まりはあっても、澄み切って魚の姿などは全く見られない。もっとハッキリ聞いておいたらよかったのに、と後悔したが後の祭り。往復200`あまりの行程だったので、せっかくの一日を棒に振ってしまった。
 Nさんのように、ここと信じて釣れるポイントがあればまだしも、私のように、それ以前の段階で失敗することも多い。

 その意味で、初めての釣り場の場合、釣り場地図は必要不可欠だ。その地図さえも、10人が書けば、10の違った地図が出来る。現場で照合しても、ずいぶん違っている場合だってある。つまり、聞くだけで、地図のない説明などは何の役にも立たぬということだ。
 「たかをくくるな」
 「地図を忘れるな」
 これ今週の反省。               (報知APG・高橋 康生)

筆者からひとこと: 毎年のことですが、2月ともなると、磯釣りからは足が遠ざかるものです。そして、ハエ釣り、渓流釣り、メバル釣りなどが主流となります。この項、今までは磯釣りに徹して、その他の釣りを削除してきましたが、56年分は少し掲載してみようと思います。たとえどんな釣りにせよ、磯釣りと共通したところはあるものですからね。