報知新聞釣り欄「魚心」から:昭和55年4月27日 

魚のオネダン Aアマとプロの区別はっきり

 

 実話である。
 ごく最近、ある新聞にこんな記事が載った。三段抜きで写真入りだからかなり目立った。
 内容は、ある釣り人(かりにNさんとしておこう)が、14`、102aというジャンボ・シマアジを釣ったというのだ。もちろんNさんはエビス顔ー。と、ここまではよいのだが、最後に、「大きすぎて処分に困ったNさんは、これを市場で1万円で売った」と締めてあるのだ。
 これは、私達釣り仲間の間で大きい反響を呼び起こした。意見はいろいろで「釣った魚を売るとはけしからん」という常識派から、「アホかいな。5万円もする魚をたった1万円で売ってしもうて」という現実派まで、口やかましいことだったが、共通していたことは、Nさんに対する非難ばかり。なぜ、釣り仲間で供養?してやらなかったという意見が大多数を占めた。
 さて、先週の話の続きになるが、昭和40年の後半から徐々に上昇しつつあった魚のオネダンは、昭和50年になって急騰し始めた。
 グレやチヌが高いのはよいとして、それまで市場で無価値に等しかったような魚まで、高い値段が付けられた。 
 試みに釣果を金額に換算したら、エサ代をオーバーすることもしばしば。いや、大釣りの時は、渡船料や交通費までカバーしてもまだ余るほどになった。
 そして、そのあたりから、一部の釣り人の間で微妙な変化が起こり始めたのである。
 つまり、頭の中で計算するだけにとどまらず、実際に魚市場へ卸すなどという、今までの釣り人には見られなかったような行動をする人が現れたのだ。それも、渡船が岸壁に着いたその足で漁業組合に売り渡すのだから反響がないはずがない。
 まず地元の職漁者がこれを見て不満を漏らした。ただでさえ、漁獲量の少ない昨今だ。釣り人が、釣り場で魚を釣ること自体に、あまり好感を持っていない人たちの目に、こういう行為がどのように映ることか。
 そういった地元の人たちの、釣り人に対する潜在意識の集積が
 「沖アミを使うな」とか、
 「アマチュアの船釣り禁止」などのアンチ釣り人運動に繋がっていることを、こんな人たちは知っているのだろうか。
 人はそれぞれに顔も考え方も違う。いろいろ事情も異なることだろう。
 だが、アマとプロの区別だけははっきりと認識して行動してもらいたいものだ。
         (報知APG・高橋 康生)