報知新聞/昭和63年5月13日(金)

どじヴェンチャー・ニュージーランド(7)

どじ連続の中での想い出は中身が濃い


 いつも「貧乏旅行」を自認しているだけに、今回の南島滞在はリッチに過ぎた。その分を、後半の北島で補うことにした。
 買い物はスーパーで、宿泊はモテルで。朝食、昼食は自炊。夕食は、自炊と外食を半々。外食といっても、BYO(アルコール類を自分で持ち込む店)専門だから安いことこの上ない。

 ウエリントンからロトルアまで、そんな旅を続けた。途中ワイカナエ海岸や、ルアペフ山の景観に時の経つのを忘れた。ニュージーランドの自然は、日本と同じ面積の土地とは思えないほど雄大だ。贅沢だの、貧乏だの、そんな次元の低いことはすべて忘れてしまう。これは負け惜しみではない。

 NZで最大の規模を誇るタウポ湖に沿って、国道1号線が走る。道沿いに、湖に注ぐ小さなわが流れていた。釣り人が3人。車のすぐそばでフライを振っている。
 「釣れた?」
 「イエス。釣ったよ。3尾だけど」
 水が澄んでいるものだからあ、偏光グラスで見たら、いるいる。大型のニジマスが悠々と泳いでいるのだ。まるで「池のコイ」といった感じで。道具を持ってこなかったことを後悔した。

 せめて、ボートでトローリングでもしてみようと、ロトルアで翌日の「早朝コース4時間」を予約した。2年前、面白い目をしたからだ。そのときのガイドはいなかったので、案内書で頼んだ。 
 翌朝、まだ薄暗い中をモーテルまで車で迎えに来てくれたのは、ジャックとロジャーという船頭さん。ボートを引っ張っている。車に乗り込み、アクセルをふかせたとたん、泊まった。
 「パンクや」とジャック。
 後はお分かりいただけるだろう。そう。全く釣れなかったに等しいのだ。アタリさえない。ただ、ビギナーズラックというやつだろうか、山川夫人が、50aという良計を1尾釣ったのが救いとなった。



 その夜は、山川シェフの腕前を十分に発揮してもらって、モテルの一室でニジマスパーティ。みそ汁もあった。漬け物もうまい。和洋折衷の料理は、この旅行を通じて最高のものになった。
                      (報知APG・高橋 康生) 

筆者から一言:
 どじとは、概して自分の不注意や、知識不足から起こるものですが、このジャックとロジャー船頭とか、ピクトンのガス欠船頭とかの場合は、当方に罪も責任もありませんよね。こんな場合、日本だとあり得ないことですし、もしあったとしても、体全体で恐縮するものですが、NZでは、全くそれがありません。「あら。ウンが悪いなぁ」とか、「あっ。わすれていた」とかで、悪気はまったくありません。みんながそれなら、こちらもそれで行きましょう。