報知新聞/昭和63年4月1日(金)

どじヴェンチャー・ニュージーランド(3)

目前でサーモン・ライズ:でも釣果はゼロ

 マイケルは10分後に、またもブラウンを掛けた。無駄のないさりげない仕草だけに、横で見学してる私たちには、「ブラウンとはこんなに簡単にかかるものか」という印象を与えてくれた。「一体、今日は何尾釣れるだろうか」という希望も持たせててくれた。
 しかし、世の中そんなに甘いものじゃない。皮肉なことに、その後全員が竿を振り始めたのと、食いがバッタリ止まったのが同時だった。マイケルにも、ジョンにも全くアタリがないのだ。
 だからこの後、心に残っているものと言えば、河原で食べたラムステーキのランチくらいのものだ。

 ところで、問題のレンタカーのキーが見つかった。どこにあったと思いますか?犯人は私ではなく、実は家内。そう、彼女のハンドバッグの中にあったのデス。
 家内を責める前に「もし私が犯人だったら、どれだけ家内に責められたことか」と思っただけでホッとするところなど、この33年間、私もよく教育されたものですなぁ。

 さて翌日は、マイケルの勧めで、クライストチャーチの近くにあるカイアポイ川へ出かける予定だったが、朝になってジョンから電話があった。
「実にラッキーです。ラカイア川の濁りがなんとかなりそうです」
 ラカイア川といえば、サケ(正確にはQUINAT SALMON)の名所として、南島随一の名が高い。だが、それは河口などで大勢の釣り人が並んでいる写真などでPRされているものが多い。にもかかわらず、ジョンが連れて行ったのは、またまた1時間半も遡ったところ。だが、濁りはやはり取れていなかった。水勢も強く、重いルアーでも流されてしまう。マイケルの必死の努力にもかかわらず、ついにこの日はアタリがなかった。



 この日の収穫は、2隻の手漕ぎボートでの川下り。流砂がボートの底で「サンド オブ ミュージック」を奏でてくれたのがせめてもの慰めとなった。最高の想い出は、ルアーを追ってきたサケの大物が、目の前で見事なライズを見せてくれたことだ。その映像はまだ脳裏に新しい。
                      (報知APG・高橋 康生)
 

筆者から一言:
 遠方へ釣りに出かけても、必ずしも釣れるとは限らないのが「釣り」であります。上手な者が、必ずしもたくさん釣るとは限らないのが「釣り」であります。釣れないときは、適当に諦めて、食事とか、観光とかに焦点を振り向けましょう。