報知新聞・魚心/昭和61年5月20日

ニュージーランド 人と魚と(8)

50aのシマアジがスレで入れがかり

 翌日の船は「スーザンローズ号」といった。前日の「アイランド・キャット号」よりははるかに大きく、スキッパーも二人いた。ギャビンとロブ。ともに34,5歳だが、まだ独身。口数は少ないが面倒はよく見てくれた。
 「釣り場は?」と聞くと、「昨日ダイブが行ったところさ」との答え。
 目的地まで来た。なるほど、前日と全く同じ場所である。同じようにシマアジのナブラ(英語ではスクールという)があちこちにうごめいていた。釣り方は、そのナブラのド真ん中まで来たら、ルアーを投げ込むわけだが、口に掛かってくる以前に、背中や腹に掛かってしまう。世話がないといえばないが、いささか物足りない感じだ。

 しかし、掛けた後の引きの強さはたとえようがない。何しろ相手はシマアジだ。しかも、体長ははかったように50a前後という良型ばかり。それがスレで掛かったときたら、ここを先途とばかり暴れまくる。
 こちらは船の上だが、何とか体を手摺りにもたれさせているだけ。それに、ウネリが大きいので船はかなりローリングが激しい。当然、足下は安定していないので、踏ん張りが効かない。両手は竿を握ったままなので、体はあちらへフラリ、こちらへフラリ。シマアジに混じってカウワイも釣れた。この魚もなかなかよくファイトする。しかし、釣り方が単調なだけんい、やがて飽きがきた。贅沢な話だが、なにか他の魚を釣ってみようということで、釣り場を変えることにした。

 私たちの狙いは、他にタイとヒラマサがあった。タイは、カツオの切り身で底を釣る。ヒラマサは、ジグ(ルアーの大型)で、そこから海面近くまで探る、いわゆるジギングで釣る。
 いろいろやっていたら、私の仕掛けにすごいアタリ。ロブの助言と手助けでやっと海面に寝かせたのは、なんと1bにあまるヒラマサだった。しかもロブがギャフ出かけて、船の中へ引っ張り込んだその瞬間、口にジグを残してテグスは音もなく切れていた。何という幸運。ちなみにテグスは7号だった。



 残念ながら、タイは不発に終わった。しかし、この国の魚影の濃さには進呈驚いてしまった。それもそのはず、これだけ広い、これだけすばらしい漁場に、職漁者の船は一隻も来ていない。遊漁者の船とても、せいぜい5,6隻ほど。日本では考えられないすばらしい環境なのだ。(この項、おわり)
                                      (報知APG・高橋 康生)
 
筆者から一言:
 この後、ニュージーランド詣りは9回続きました。前半は、まさに「釣り天国」とも言うべき環境が続きましたが、後半あたりから急変しました。シマアジのナブラが姿を消したのです。訳を聞きますと、日本の商事会社がこの魚の宝庫に目を付け、主としてシマアジとタイとを乱獲し始めたのだそうです。漁場には、立派な冷凍庫が建ち、シマアジもタイも、すべて、「活き締め」にして冷凍処理。「活き締め(ikijime)」という日本語が、立派に通用していますので驚きでした。