報知新聞・魚心/昭和61年4月22日
豪州の釣り人たちF
ステファン
フルネームは、ステファン・コベルスキー。聞き慣れない名前と思ったら、祖父がポーランドから移民して来たとのことだった。 なるほど、そう言われれば36歳klと言う年齢に似合わず立派に刈り込まれたほお髭の端正な顔つきは北欧系のものだ。
ちょうど真夏のことでもあり、ほとんどの人たちがTシャツ、半ズボンという出で立ちの中で、彼の服装は紳士そのものであった。それで、さほど汗をかいている風でもない。やはり、血は争えないのだろうか。
性格も律儀そのもの。昨年も、午前4時、パース空港へ出迎えに来てくれたし、今年はなんと二時間遅れの午前6時までオールナイトで待っていてくれた。
さて、そんなステファンは、バース市周辺のマーミオン釣りクラブのマネージャーという肩書きだ。別にシーフードレストランの経営にも加わっているということだが、それでいてクラブの近くにあるソレント海岸を見下ろす小高い丘の上に、瀟洒な邸宅を持っているのだ。
奥さんのスーザンとの間には、シモンヌという一歳の可愛い女の子がいる。妻子への気の使いようはまた格別だ。典型的なオーストラリアン・ハズバンドと
いったところだろうか。
写真は、事務局長コベルキーさん夫妻。
この女の子は、いまや芳紀23歳。信じられないような早さで、時は流れる。
滞豪二日目、宇野さん宅で私たちのためのパーティーを催してくれた。デリス夫妻、ウエイン夫妻、ヤーウッド夫妻、クレッグ夫妻といずれも夫婦連れでの参加の中で、ステファンだけは単身参加。理由は、子供連れでは奥さんがかわいそうだとのことだった。
そんなステファンだが、釣り好きという点では人後に落ちない。昨年も今年も、ロットネスト島へのキング・ジョージ・ホワイティング釣りには喜んで参加した。釣りは熱心だが、人を押しのけてまで釣るという厚かましさは微塵もない。釣りマナーの点でも百点満点の紳士なのだ。
一つ申し訳ないことをしてしまった。彼が、何か知らないが大物を掛けて竿をしならせたときのことだ。短い竿は船底に吸込まれそうに曲がり、小さいリールはドラッグが出っぱなしになった。見るに見かねて横から私がでを出したものだ。藻の中に潜られてしまっては万事休すーーと思った私は、無意識のうちにドラグを締めた。締めたのと、竿先が伸びたのが同時だった。ーーでもステファンは、その残念さを顔に表さなかった。この借りは、いつかお返ししなくては、と心に決めている。(おわり)
(報知APG・高橋 康生)
筆者から一言:
ショパンの国、ポーランドからの移民と書きましたが、お宅を訪問したとき、私の家内が感心しっぱなしのことがありました。
きれいなお宅の中は、ピカピカに掃除されていて、どの部屋にも日常の家庭用品の類が一切表に出ていないのです。(「見習いたい」とこぼしていた家内ですが、一向に見習っていません。)それにしても、あのときのお人形のように可愛いかったスーザンちゃん。今や芳紀23歳のはず。一度会いたいと思っています。来年の春あたりに行ってみようかナ。