報知新聞・魚心/昭和58年7月26日
アユ友釣りの面白さ:吉野川釣行記
X月X日
河原で転んだ。右手にオトリカン、左手に竿を持って移動している最中だ。二、三歩先を歩いていた家内が振り返った。そしてひと言、
「竿、折れへんかった?」
竿が折れへんかったら、ワシはどうなってもええのか?ーーー幸いゲガはなかったものの、心中甚だおだやかではない。
この日、午前中、吉野川の東三好橋下流で大アユを狙ったが、全くアタリが亡かったので、どこは他の場所へ移動してみよう、と引き上げていたときの出来事だった。
私は、この日はもう、ふてくされて車中で寝てしまった。家内は頑張って4尾をものにした。
Y月Y日
性懲りもなくまた吉野川をめざした。今度は勝算があった。「吉野川のアヒル」の異名をとる小里哲也さんにポイントを教えてもらっていたいたからだ。場所は青石橋の上流左岸。
吉野川は早朝釣れない。午前7時から釣り始めて、初めて掛かったのは、2時間あまりたってからのこと。どういうわけか、私にツキが回って午前中に7尾。家内はゼロ。
このジアイは昼前に一度止まった。私は車中で弁当、そして昼寝。だが、家内は休まない。私のオトリを持って約200bほど上流へ移動した。
寝入りばなを付近の人に起こされた。「奥さんが呼んでまっせ」というのである。釣れるから来いというのか、オトリカンを持って来てくれというのか、わからないがとにかく移動してみた。
家内はいささか興奮したおももち。「今、ダブルで飛ばしたわ。その前はハナカンのアユが振りちぎられたし」と言いながら、震える手で仕掛け直し。
そこは一見、淀みのようなポイントで、とても友釣りが出来るような感じがしない。恐らく誰もが竿を出さなかったのだろう。
早速オトリを泳がせてみると、入れ掛かりだ。しかも20a以下がないという良型ぞろい。竿は満月のように曲がり、道糸はビューンと唸る。もう友釣りの醍醐味の極致だ。
夕方までに、私は合計25尾の大アユを物にした。どういう訳か(多分竿の長さの違いと思うが)、家内は6尾。
世間の人は何やかやとうるさく取りざたしているようだが、やっぱり腕は私の方が上なんだ。ーーそう書きたいところだが、昼寝している私を起こしてくれたのは家内なんだから、この日の釣果は「家内との共同作戦が功を奏した」と書いておく方が、私にとって奥ゆかしいというものか。
(報知APG・高橋 康生)
筆者から一言:
とにかく、吉野川のアユは大きいのです。良く肥えています。力が強いのです。ですから、普通のアユ釣りと思っては間違いのもと。私はいつも、アユとは種類の違う魚を釣りに行くつもりで出かけています。