報知新聞・魚心/昭和58年6月28日

アオブダイにご用心

 つい一ヶ月あまり前のことだが、高知県のある町で、ある人が水中銃でアオブダイを仕留めた。早速仲間を集めて酒盛りを始めたまではよかったのだが、宴たけなわにして、下痢や吐き気をもよおした。それどころか、筋肉が痺れ始め、痛みさえ伴った。五人が五人ともだ。
 
 急いで救急車で病院へ運び込まれたが、この症状はしばらく続いた。幸い命には別状がなかったが、あわや一大事になるかの雰囲気さえただよったそうだ。原因は、オアブダイの肝臓など内臓にあった毒が、これをダシに使った料理のため全体に回ったものとされている。

 昨年のことだが、同じアオブダイの内臓料理を食べた三重県の老婆が同じ症状で失命した話を聞いた。また、長崎は神戸でも同じような被害が記録されている。
 被害者はまず虚脱感にとらわれ、ついで腰や首の筋肉に痛みを覚える。これが高じてくると、呼吸作用に必要な筋肉さえ侵されるのだそうだ。
 この毒は、シガテラ毒という、サンゴの新芽や海草に寄生し、それを食べる南洋系の魚などの中に蓄積される可能性があるとか。

 アオブダイも、そんな魚種の一つで、小さいうちは全く心配はないが、大きいヤツは、内臓に蓄積されている恐れがあるという。場所に寄れば、ヒラマサのような魚でもシガテラ毒を持っている場合があると言うからやっかいだ。しかも、シガテラ毒については、まだ充分研究されていないので、解毒剤さえわからないとのことだ。

 「週刊読売」の6月22日号を見ていたら、医学の発達した現在でも、奇病難病はあとを経たぬという記事が名に付いた。アメリカでは、原因不明の病気「エイズ」が流行し、40%という死亡率の高さで、一般の人にまでショックを与えているとか。
 ある理科で発見されたラッサ熱は感染度も高く、発病後一週間で死亡するとか。マールブルグ病と呼ばれる奇病は、患者の涙を拭いたティッシュペーパーに触れただけで発病するという感染力の強さを持ち、28%の死亡率。これなどは、アフリカのウガンダから輸入したミドリザルの内臓に触れた研究員など31人が発病したそうだ。

 いずれにせよ、動物、魚類の内臓の周辺には、いろいろトラブルの要因が潜んでいるのは否めない。とりあえず、分かった範囲だけでもお互い連絡しあって、不慮の災難に遭わぬように気を配りたいものだ。
                                     (報知APG・高橋 康生)

筆者から一言:
 この事件以後、幸い、釣り界を騒がせるようなことはありませんでしたが、人間に被害を及ぼさないまでも、釣り人の迷惑になるような事件はありました。アユの冷水病です。この伝染病にも似たアユの病気のため、アユ釣り界は衰退の一途と辿り、加えて、カワウによる被害で、この10年あまりというものは、ファンの数はドカ減りとなりました。一日に20尾でよい。いや10尾でもよい。なんとか夏の間は、あの面白い釣りを楽しみたいものです。