報知新聞・魚心/昭和58年3月12日

甘い認識に失望:ある釣具メーカーの社長発言

 ある週刊誌をペラペラとめくっていたら、フト、ある釣具メーカー社長の『トップ・インタービュー』というページが目に入った。 このメーカーは、戦前からずっと日本の代表的釣具メーカーとして君臨していたが、10年ほど前から他のメーカーの追い上げが激しくなり、最近は、エレクトロニクスの分野での提携など、色々な話題を提供している会社だ。

 今後の方針としては、釣具のほかにパソコン、ゴルフ、電動工具など多品種にわたって少量生産路線に切り替える、と言っているのだが、肝心の釣具について意見を聞かれたのに対し、こんな答弁をしていた。
 「釣具もエレクトロニクス化しており、この波に合わせて、現在当社では魚影探知機を開発中です。これが出来れば魚はもっと簡単に釣れるようになるでしょう。もっともプロの釣り人には不満かも知れませんがネ(笑い)」

 釣具見本市も先月終わったばかりだが、いったい釣具のどこがエレクトロニクス化されていたのだろうか。それに、大自然の中で、男の夢とロマンを追う「釣り」という行為に、なぜエレクトロニクスが必要なのだろうか。
 それにおかしさが込み上げてきたのは、仮に魚影探知機が完成したとしても、魚影を探知しただけで、どうして簡単に魚が釣れるという保証があるのだろうか。
 まだある。「プロの釣り人」とはどういう人種だろうか。残念ながら、日本には釣りという行為だけで食っていける釣り人はほとんどいないはずだ。これは「ベテランの釣り人」という意味だろう。その辺の認識が曖昧なのだ。
 
 最後に「あなたの趣味は釣りとゴルフですか?」と聞かれてー
 「ゴルフはまずまずの腕前と自分では思っていますが、釣りの方はダメですね。でも、うちがいま、開発中の魚群探知機が完成すれば、、、と期待しているところです」

 釣具メーカーの社長ともなれば、たとえウソでもよい、「釣りは下手ですが、大好きです」くらいのことは言ってもらいたいもの。淋しい限りだが、このページからはこの人の釣りに対する情熱と理解を感じ取ることは出来なかった。
 釣具製造という業界は、エレクトロニクスなどに較べるとそれほど魅力のないものなのだろうか。伝統ある会社で、私も古くからお付き合いがあるだけに、残念な気がした。
                                             (報知APG・高橋 康生)

筆者から一言:

 私は別に予言したわけではありませんが、このメーカーはその後、紆余曲折を経て、今は文字通り釣具の少量生産路線に甘んじている様子です。