報知新聞釣り欄「魚心」から:昭和57年12月4日 

判断の明暗:
大釣りポイントにもムラ
 
 11月の初め、福村磯のチヌ釣りで20尾を仕留めたことは「釣り場ニュース」でも書いた。ちょうど2週間後に、徳島県釣連盟の会長懇親チヌ釣り大会があった。常日頃、クラブの世話をしている会長さんや連盟の役員らが、気兼ねなくチヌ釣りを楽しもうという趣向で、毎年行われている。これは人気行事の一つで、今年は100人を越す参加者があった。
 福村磯はこの日、全島貸し切りとなる。島を6区に分け、抽選で釣り場が決まるのだが、私の引いたくじは奇しくも2週間前と同じ「丸島の二階の東奥の奥」というポイントだった。瞬間、私の心はバラ色に輝いた。
 「今日はどんなに悪くても、先日の半分くらいは釣れるだろう。そうすれば上位入賞は確実。いや、うまくいけば優勝が転がり込んでくくるかも・・・」などと早くも取らぬ狸の皮算用だ。
 ところが、世の中、そんなに甘いものじゃない。1時間、2時間、いや3時間たっても、ウキは一向に沈まない。あの時は、どこへウキを投げ込んでも、チヌは待ちかまえていたように釣れたのに。
 9時と正午に船が回ってきたが、先日の栄光が頭にこびりついているので、磯替わりはしなかった。やっと、ウキが沈んだのは、午後2時過ぎ。結局、この日釣ったチヌはこれ1尾に終わった。
 そこで反省してみた。理由は、当日は極端なナギだった精もあってか、ぐるりと合計11人もの釣り人が並んだからだろう。また、連日好調のニュースのため、釣り荒れしていたのかも知れない。現に、この日の上位入賞者は、2流、3流の磯で、敢然と北西の風に立ち向かって釣った人達だった。

 「一度あることは二度ある」という反面、「柳の下にドジョウはおらぬ」ともいう。「善は急げ」と言うかと思えば、「急いては事をし損じる」とも言う。要するに、釣り人たるものは、こんなパラドックスに捕らわれることなく、「一度釣らぬ馬鹿、二度釣る馬鹿」といったあたりで状況判断するのが賢明と言えそうだ。
                                        
   (報知APG・高橋 康生)

筆者からひとこと
 昔、福村磯のチヌは本当にたくさん釣れたものです。特に、秋の「落ちチヌ」のシーズンには、10尾や20尾は当たり前、連盟の大会の優勝では、30尾が目安だったこともあります。かく申す私も、昭和49年度の大会で33尾を仕留めて優勝しました。場所は、栄作の胴裏。グラスロッドの時代でしたが、竿は2本用意して、遠近と使い分けて釣ったものです。ちなみに、私の家内も、同じ年に、奇しくも同じ場所で33尾。引き分けであります。