報知新聞釣り欄「魚心」から:昭和57年10月9日 

釣行ドライブ慎重に
 
 つい最近のこと。早朝のひととき、吉野川へハゼ釣りに出かけた。小型ながら、カニと二人で100尾ほど釣ったところで切り上げることにした。サオを納め、道具を片付けた。車を止めてあるのは、すぐ近くの土手の上。私は車に乗り、土手の上でUターン。それを家内は外で見守っていた。

 いったん前進し、続いてバック。狭い道だから、面倒だが切り直す必要がある。二度、三度と切り直して、最後にアクセルをふかして前進しようとした。ところが勝手がちがう。前進するはずの車が後退しているのだ。慌ててブレーキを踏んだのと、家内が「どしたん、どしたん」と叫ぶのが同時だった。

 ウインドーを開けて運転席から後輪を見ると、なんとそれは土手の肩から限界を越えてズレかかっていた。しかも、私の体がやや上向きになりつつあるではないか。顔から血の気が引いていくのがわかった。万事休す。
 なすすべのなく、家内と二人でオロオロしていたら、運よく若い二人組が車を止めた。ここへ釣りにやってきたのだそうだ。「地獄で仏」とは、まさにこんな時のことを言うのだろう。
 「セイノー」のかけ声とともに、二人が後押ししてくれ、難なく危機を脱したときはホッとした。

 それから二、三日後、夕刊を見てハッとした。クレーン車が川から乗用車を引き上げている写真が載っているのだ。見出しにはこう書いてあった。
 「土手でUターンに失敗。若者車ごと川の中へ」 幸いこの若者は無事に脱出したとのことだったが、我が身につまされてゾッとしたものだ。読者諸兄も、車で釣行の際には、遠近、日夜、難易の別なく、常に慎重にどうぞ。
 
                                                                 
   (報知APG・高橋 康生)


筆者からひとこと
:とはいうものの、あれから四半世紀。私は無事故でーーーと言いたいところだが、そうはうまく事が運びませんでした。とは言うものの、こうして元気でいるのは、その事故がたいしたものではなかったと言うことですヨネ。