報知新聞釣り欄「魚心」から:昭和55年12月21日
個性豊かな釣りスタイル
某社主催ハエ釣り名人戦で、今年も全国から36人の選手たちが、岡山の旭川に集まった。この種の大会は、その釣りについての各地のレベルやお国柄が伺える。と同時に、その速やかな交流が行われるため、全体のレベルアップには大いに役立っている。
地元の岡山勢はさすがに強い。最後の決勝には、4人中3人までを占めた。優勝候補のほとんどが「関西勢」だという下馬評が多かったにもかかわらず、このような結果になったのは、地の利を占めているという理由のほかに、結局は全体のレベルが高いからだろう。
それでもなお、個人個人の釣りスタイル、合わせの仕方、魚の取り込みなどは全く違ったものだから面白い。たとえば優勝戦に出た仁科さんは、さすがに貫禄充分。淡々と、さりげなく釣っていた。長尾さんは、釣った魚を左手だけでハリを外していたのが印象的だった。西平さんは、上半身を前のめりに構えて、終始真剣そのもの。真摯な態度が好感を受けた。
選手諸君がこの大会にかけた熱意のほどは、エサの作り方でもうかがえた。おおかたの選手は、マキエ、サシエとも、旅館で用意したものを使ったが、一部の人たちはそれをさらに自分で練り直していた。ふと見てしまったのだが、ミルクを入れている人もいた。ハチミツ、黒砂糖を混ぜている人もいた。生卵を割り込んでいる人もいた。ちょっと行き過ぎではなかろうかと思ったのは、化学調味料を入れているのを見た時である。
果たして、ハエがグルタミン酸を識別するかどうか疑問だが、少なくとも精神的に自信を持てるということで、やはりそれなりのメリットはあるのかも知れない。だが、優勝した大西満さんの挨拶が面白かった。
「マキエは、多くの人からいろいろ頂きました。正直な話、どれがどれだかわからなかったけど、とにかく優勝出来ました。」
英国代表として参加したのは、この欄でもたびたびご紹介したノーマン・エドワーズさん。今年の冬も1ケ月の休暇を日本で過ごすためにやってきた。ハエ釣りは初めてだが、釣り好きだけに「トライしてみる」というわけで出場した。前日のリハーサルの時には、1時間で9尾も釣り「おもしろい」と悦に入っていたが、本番ではノッケから仕掛けを飛ばしてしまった。
手先はさほど器用でない。おまけに早朝は厳しい寒さで指先は凍えている。極小のオモリをつけたり、ハリを結んだりすることが出来ずに河原でしゃがみ込んでギブアップ。そこに居合わせた取材陣の人たちが見るに見かねて仕掛けを作ってあげたという、時ならぬ「国際親善風景」も展開された。 (報知APG・高橋 康生)
筆者からひとこと: