報知新聞釣り欄「魚心」から:昭和56年11月27
日
君は信じられるか?
十六日、報知グレ釣り名人戦で足摺岬へ行ったとき、志賀さんと南さんから面白い話を聞いた。志賀さんが掛けたヒラマサを南さんがギャフで引っ掛けたと思ったら、それが全く別の魚であった、という信じられないような話だ。この話は大西満さんによって先週この欄で紹介された。私は、本人から聞いていたので、面白く読ませてもらったが、一部ではなかなか信じがたいという声もあった。
それはそうだろう。こんなことは、長い釣り人生の中でも、そう再々起こるものではない。しかし、世の中には、まま信じられないようなことが、実際に起こるものだ。去年だったか、これは牟岐大島で起こった話である。
Sさんがヒラマサを掛けた。友人Mさんがオットリ刀ならぬ受け玉を持って横で構えた。何分かの格闘の後、やっと水面に浮かせ、今まさに受け玉の中へ収めようとしたその瞬間、何を間違えてか、全く別のヒラマサが受け玉の中へ飛び込んできたのである。もちろん、これは直前まで、広い海を自由に泳いでいたものだ。そのヒラマサも驚いただろうが、もっと驚いたのは受け玉を構えていたMさんだった。−こんな話、信じてもらえるだろうか。
「事実は小説よりも奇なり」という。釣行中、こんなことが時に起こり得るのだ。
クジ引きやジャンケンにごく弱い私はイソ取りを決めるときなど、まともにやって勝ったことがない。なのに、クジの世話をして「残りクジ」を引くと、これが一番だったりすることがよくある。
つい最近、大西満さんが福村へチヌ釣りに行った。クジを引くと何とこれがビシャの「大西。」大西さんが大西でチヌを八尾釣ったわけだが、これなども狙ってできることではない。
十年ほど前、柏島に釣りに行っての帰り、あの狭い道で車と対向した。両方が避けないまま近づいた。見ると、向こうのフェンダーが私の車のドアの部分にくい込み、ポッコリ引っ込んでしまっているのだ。“修理一金参萬円也”の見積りが頭に浮かび、その腹立たしさが態度に現れた。いったん退き、私は威かくするように車のドアをバタンと閉め、肩をいからせて相手の車に近づいた。
「無理するからやないか。どないしてくれるんや。」
「払いますがな。けど、どこがどないなってますのや」
「このドアのところやがな」と私が指したドアの部分には驚いたことに何の別条もなかったのだ。一瞬拍子抜けして、あとの言葉が出なかったが、冷静になって考えてみると、どうやら、バタンとドアを閉めた時、また元にもどったのだろう。−こんな話、果たして信じてもらえるだろうか。 (報知APG・高橋 康生)
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