報知新聞釣り欄「魚心」から:昭和56年6月6日
本音と建て前の間
6月1日のアユ解禁日に、徳島県下でこんなことが起こった。
県南の宍喰(ししくい)川で、投網を使ってアユをとっていた高知県の4人の男を、密漁の疑いで牟岐署員が連行したという事件だ。ところがよく調べてみると、刺し網などとは違い、投網は別に知事の許可などを必要としない。おまけに、宍喰川は漁業組合がなく、アユの採捕は自由だということが判った。くだんの4人の男はホッとした表情で引き揚げた、というものだが、ある新聞記事の最後の欄は、遠慮会釈なくこの署員を評していた。
「規則の内容も知らずに取り締まりをし、犯罪の疑いをかけて連行しようとした同署員の措置はあまりにもおそまつ。この事情を知った町民の間には、『もっと勉強をすべきだ』との声も出ている。」
ーー事情はともかくとして、解禁日早々、投網で漁獲を図る行為は「乱獲」以外の何ものでもない。この男たちが、午前中に得たアユは8.4`、464尾にも及んだ。これを友釣りで楽しむとなると、何倍もの人たちが何日も楽しめるはずだ。
宍喰町は、海洋漁業の町だから、川魚に対して無関心なのかも知れない。だが少なくとも、この署員を批判する前に、アユがこれだけ遡上する川に、この際漁業権者の設置を考えるなど前向きの姿勢を取ってもよいのではないか。ちなみにこの南隣にある野根川は、「下流半分」が高知県東洋町に属し、まるで宝物のように河川管理を徹底させているのに、宍喰町の領域である「上流半分」は百鬼夜行のありさま(ここも漁業権がない)。高知県側は一夏中釣りファンで賑わっているのに、徳島県側は解禁日の内に根こそぎ若アユをとってしまう。
ーー入漁証が飛ぶように売れ、オトリ屋が繁盛し、民宿が賑わう川と、一部の無法者に乱獲を許す川とどちらが得かよく考えてもらいたい。
この署員は、今後一切アユ漁の取り締まりからは手を引くことだろう。アユ釣りファンは、勇気ある心強い味方を一人失ったことになる。おしいことだ。 (報知APG・高橋 康生)
筆者からひとこと: 今から見たら、25,6年前のの友釣りはまるで、「夢のような楽しさ」がありました。ところが、5,6年前から「アユ の受難時代」が始まったのです。先ずは冷水病。次にカワウの異常発生。ブラックバスも天敵的存在です。更に 追い打ちをかけるように、今年は異常渇水に見舞われています。少々の乱獲があってもいい。心からアユの復活 を願うものです。