報知新聞釣り欄「魚心」から:昭和56年3月29日
八丈島(1) 夢アワと消える
「その昔、江戸から流人を運んだ絶海の孤島」というイメージの割には、八丈島への道は案外近かった。
徳島から東亜国内航空で東京へ直行。全日空に乗り換えて八丈島へ直行。その全行程は、待ち時間を入れても3時間しか掛からなかった。
16日、私達夫婦はうきうきした気持で徳島空港を出発した。
黒潮に取り囲まれた緑の島「八丈」。フリージアの花が咲き誇り、大型グレが乱舞する秘境「八丈」。うまくすれば、シマアジやヒラマサにもありつけるかも、などと夢は大きく広がった。
やがて羽田空港。ーーーここまでは順調にことが進んだが、乗り継ぎをするころからいささか調子が狂い始めた。「八丈島行きの航空便は、現地強風のため、引き返すことも予想されます」という。
そんなバカな。何しろ東京では、煙突の煙がまっすぐ天に昇っているではないか。
だが、それを裏付けするように出発時刻が大幅に遅れた。なんとか出発。ーーー八丈島上空ではかなり揺れを見せたが、何とか空港に降り立った。早速、迎えに来て下さった「もろこや」のご主人にいろいろ話を聞いたが、その内容は必ずしも芳しいものではなかった。
第一に、八丈は強風の名所。2月、3月には、月に10日も釣りが出来たら良い方だという。現にこの日も船止め。13日から4日間も無益に居続けている人もいるという。
第二に、八丈本島の地イソでは、最近グレが全くk釣れなくなったのだそうだ。この日の午後も、灯台下の地イソで竿を出してみたがアタリもない。
第三に、名古屋からの直行便で、関西からの釣り客が急増したとのこと。釣り客相手の民宿はどこの満員の盛況だし、船、宿、エサの世話で大忙しのもろこやのご主人の目は、睡眠不足で赤く腫れていた。ーーーもはや、八丈は秘境ではなくなった感じなのだ。
明けて二日目。この日もやはり強風のため早朝は船止めとなったが、午後からはどうやら八丈小島へ船を出せることに。だが、波が高いので、上がれたのは二流イソ。しかも9人全員が同じポイントで竿を並べることとなった。海は真っ白に沸き返っている。グレが釣れるはずがない。
ーー八丈まで来てしまったことを後悔する気持ちが、心の片隅で頭をもたげ始めた。(この項つづく) (報知APG・高橋 康生)
筆者からひとこと: あこがれの八丈島でさえ、24年にこんな状態だったのです。今や、日本で「秘境」と言えるのは「男女群島」くらいではないでしょうか。