報知新聞/平成元年3月31日(金)

続・どじヴェンチャー・ニュージーランド(3)

夢のシマアジが釣れた:地元のサンデー名人

 日本車のレンタカー(マツダ・8人乗り)に3組の夫婦が乗り込んで、自由に旅を続けるー。
 一見、のんびりしているようだが、実はそうではない。知っている土地を走るのなら簡単だが、私たちはいつも「見知らぬ土地」を訪ねることにしているので苦労がある。

 一人が運転する。私は助手席で地図をにらんでナビゲーター。ところが「はい。そこの角を右へ曲がってーー」などと言っても、時速100`で飛ばしていたらなかなかすんなり止まれるものではない。
 「うん。まあ、ええやろう」と、次の角を曲がったものなら、全く目的地と別な方向へ行ってしまうことも珍しくない。

 ファンガレイから南へ、約50`くらいのところにいい釣り場がある、と聞かされて、探しながら車を飛ばしていたら、ワン・ツリー・ポイントという変な名前の町へ入ってしまった。その町のはずれに大きな埠頭があった。
 「立ち入り禁止」とある。だが、100bほどの埠頭の先端で、10人ほどが釣りをしているのが見えたので、私たちも車を入れた。朝から降っていた雨は止んだんものの、横殴りの風がきつい。

 手前にマオリの女の人が二人。いずれも手釣りだ。
 「どう?」と聞いたら、ニッと笑ってビクの中身を見せてくれた。35aほどのマダイが2尾。「今日は風がきつくて」と弁解しながら、熱心に釣っている。

 埠頭の先の方で、白人が何かを掛けた。この人も手釣りだ。何か大物の気配。糸さばきも鮮やかに、その人が抜き上げたのは、なんと私たちが夢にまで見た「シマアジ」だった。しかも45a級。もっと驚いたのは、その男がさりげなく魚を放り込んでいたポリケースの中には、全く同型のシマアジが15,6尾。
 「今朝釣ったの?」
 「イエス。8時から釣り始めた。風がきついから釣りにくい。」
 「いつもこんなに釣りの?」
 「そうだよ。シマアジが好きでね」
 
 そう言いながら、この男はエサ袋の中から、カニを5,6匹出して足で踏んだ。これがマキエサで、サシエサはピピという貝の中身だ。
 早速、私たちも並んで釣ることにした。エサはボイルの沖アミしかない。ウキ下を5ヒロと見た。ハリスは5号。
 竿を振り込んで2,3分。ウキが引いたーーというより、もう竿をひったくられていた。すごい。油断をしたら、埠頭の足に持って行かれる。いや、持って行かれた。ーーだが、強引にあしらったらセーフ。
 アッ。受け玉がない。エイ。5号だ。ゴボー抜きだ。上がった。周囲からおしみなく拍手が送られた。

写真は45aのシマアジをゴボー抜きした
                                                       地元のサンデー名人

 この後、家内と代わった。すぐ掛けた。ーだが、バラした。続いて掛けた。またバラした。次いで3尾目も。ぐずぐずしていたら、潮が変わった。ピタリ。食いも止った。それは短時間だったが、夢のようなひとときであった。こんな場所で、まさかシマアジが釣れるとは。 

 糸さばきのうまい男は、サンデーと名乗ったが、さらに3,4尾追加して、「ちょうど20尾になったよ」と涼しい顔。釣りのうまい男はどこにもいるものだ。
                   (報知APG・高橋 康生) 
私も釣った45aのシマアジ。強風で髪が舞い上がって                                     います。早速、モテルへ持ち帰って刺身にしました。